はじめに
アパート経営のような不動産投資を行っていると、老朽化などの事情で今所有している物件を売って別の新しい物件を手に入れる、というようなケースもあるかと思います。
つまり物件の買い替えですね。
この場合、古い物件を売ってもうけ(売却益)が出ると、当然税金を支払うことになります。
ところがこの税金、条件を満たせば納税を先送りできる特例制度があることはご存じでしたか?
これを「事業用の資産を買い換えたときの特例」と呼びます。
どのような制度なのでしょうか?
制度の概要
さっそくこの特例制度の概要について説明していくことにしましょう。
どんな制度?
土地や建物といった事業用の資産を売ったとき、もうけが発生すれば税金を支払わなくてはなりません。
しかし、この特例を利用すれば、事業用の資産を売って別に事業用の資産を買った場合、つまり買い替えを行った場合に、その税金を先延ばしにすることができるのです。
当然、不動産投資も立派な「事業」ですから、この制度の適用を受けられる可能性があります。
なお、この特例を利用するためには所定の書類を添付して確定申告を行う必要があります。
どれくらいの額の納税を先延ばしにできるのか?
これは旧物件を売った額と新物件を買った額の大小によって変わってきます。
新物件を買った額が旧物件を売った額以上の場合は、まず次の2つの額を求めます。
(1)旧物件を売った額×0.2
(2)(旧物件の購入額+購入経費+売ったときの経費)×0.2
そして、(1)から(2)を引いた額が課税の対象となります。
一方、旧物件を売った額が新物件を買った額を超える場合は、次の2つの額を求めます。
(3)旧物件を売った額-新物件を買った額×0.8
(4)(旧物件の購入額+購入経費+売ったときの経費)×((3)の額÷旧物件を売った額)
そして、(3)から(4)を引いた額が課税の対象となります。
結果として、上記の課税対象額以外のもうけに対する税金が先延ばしできることになります。
ただし、旧物件の所在地が地方で、買い替える新物件の所在地が大都市など所定の地域となる場合は、先延ばしできる税金の額がやや少なくなりますのでご注意ください。
注意点
この特例制度を利用するためには、いくつかの要件を満たす必要があります。
例を挙げると、新しい物件は旧物件を売った年の前年~翌年までの間に買わなくてはなりません。
また、新しい物件を取得した日から1年以内に事業用として使用する、つまり不動産投資の場合であれば賃貸経営に使う必要があります。
これ以外にもいくつかの要件が定められていますので、特例制度を利用しようとする場合は国税庁のウェブサイトで確認したり、税理士あるいは不動産業者などの専門家に問い合わせをしたりするようにしてください。
最後に
今回は、「事業用の資産を買い換えたときの特例」という制度について説明しました。
なお、この制度を使ってできるのはあくまでも納税の「先送り」であり、税金が免除されるわけではありませんので誤解のないようにご注意ください。