はじめに
「いとこ」とは、親の兄弟姉妹の子のことですよね。
ところで、他に親族のいないいとこが亡くなった場合、その財産を相続することはできるのでしょうか?
また、自分の財産をいとこに相続させることは可能なのでしょうか?
相談事例を参考にしながら、以下で考えてみることにしましょう。
相談事例
41歳の男性です。
つい先日、いとこが56歳で急死しました。
ある日、道を歩いている最中に急に倒れ救急車で搬送されたのですが、病院に到着したときにはすでに亡くなっていました。
医師の話では心臓の発作が死因らしいとのことで、もともと酒好きで糖尿病の気配もあったようですし、長年の過剰なアルコール摂取や不健康な生活習慣が彼の命を奪うことになってしまったのかもしれません。
ところで今回相談したいのは、いとこが経営していたアパートについての話です。
いとこは生前、アパートを2棟所有していて管理なども自分で行い、それで生計を立てていました。
2棟とも築年数はそれなりに経っているのですが、両方とも駅近くの一等地に建っていて立地条件が良く、建物もそこそこきれいなためか満室に近い状況で、経営状態はかなり良かったようです。
ところが、いとこには家族がいません。
結婚は若い頃に一度したそうですが、いとこの酒癖の悪さや浮気癖などから早々に奥さんは逃げ、離婚となってしまい、それ以来亡くなるまで独身のままでした。
また、子どももいませんし、両親もすでに亡くなっています。
したがって、いとこの親族と言えば、今はもう私くらいしかいない状態なのです。
ということで、できることなら私がそのアパートを相続したいと考えています。
恥ずかしい話ながら、私には事業の失敗やギャンブルで作ってしまった借金があります。
でも、もし、いとこのアパートをもらってそれを売却すれば、その借金をすべて返済できそうなのです。
いとこも、唯一の親族である私にアパートを譲りたいと天国で思っているはずです。
いとこが残したアパートを私が相続することは可能でしょうか?
遺言書の有無がカギ
相談事例の場合、亡くなられた方が「死後、アパートを相談者の方に譲り渡す」旨の遺言書を残しているかどうかがカギになります。
いとこは、法律の定める相続人(法定相続人)になることができません。
このため、いとこの遺産を受け取ったり、逆にいとこに遺産を譲り渡したい場合には、一般的には遺言書が必要です。
ですので、もしそのような遺言書がないのであれば、相談者の方がアパートをもらえる可能性はほとんどないでしょう。
ですが、「いとこと生計を同じくしていた」とか「いとこの介護をしていた」といった事情があれば、「特別縁故者」と認められ遺産を受け取ることができるかもしれません。
ただし、この場合は裁判所への申し立てが必要となります。
なお、遺言書がなく、特別縁故者とも認められなかった場合(つまり相続人が誰もいない場合)、そのアパートや土地など亡くなられた方の財産は、最終的に国のもの(国庫に帰属)となります。