はじめに
亡くなられた方の財産は、ふつう遺言書の内容や遺産分割協議と呼ばれる話し合いによって誰がどの遺産をどれくらい受け取るかを決めることになっています。
それを決めるまでの間に時間がかかった場合も、一般的には亡くなられた日までさかのぼって、遺産を相続することになった方の所有物となります。
しかし、家賃収入の場合は少し話が違ってきますので、注意が必要です。
相続したアパートの家賃収入は誰のもの?
一般的な話だけでは少し理解するのが難しくなるかもしれませんので、ここではある相談事例を参考にしながらその内容について見ていくことにしましょう。
関東地方のとある市にお住い、30代女性Aさんからのご相談です。
相談事例
3ヶ月近く前に父親が亡くなりました。
両親は私が幼い頃に離婚しており、父親はアパート経営をしながら男手一つで私を育ててくれていたのでした。
私に兄弟はいません。
父親は私が社会人になってしばらくしてから別の女性と再婚し、ここ4、5年私は父とは離れて暮らしていました。
今回相談したいのはそのアパートに関することです。
実は、父が亡くなったショックのせいか私はしばらく体調を崩してしまっていました。
最近になってようやく、遺産を父の再婚相手とどのように分けるか話し合いを持つことができたのです。
父は生前、アパートのほか、いくばくかの金融資産を所有していましたが、話し合いの結果、アパートは私、そのほかの財産は2:8の割合で私とその女性が分け合うことに決まりました。
大きくもめることもなく無事話し合いが終わり、ホッとしていたのも束の間。
つい先日、父の再婚相手から連絡がありました。
彼女が言うには、父が亡くなってから話し合いがまとまるまで2ヶ月間のアパート家賃収入の半分を渡してほしいとのこと。
2ヶ月間の家賃収入は160万円ほどでしたから、金額にして約80万円を要求してきたのです。
私としては、最終的にアパートは私のものになったのだから、その間の家賃収入も自分のものだと考えていました。
しかし、彼女が言うにはそうではないらしいのです。
弁護士に聞いたから間違いないとも言っていました。
実際のところ、どうなのでしょうか?
半分は相手側に
結論から言えば、この場合Aさんは2ヶ月分の家賃収入の半額に当たる約80万円を相手側に支払わなければなりません。
それはなぜなのでしょうか?
実は、お父様が亡くなってから話し合いがまとまるまでの間、アパートはAさんと再婚相手の女性の2人で共有していた形になります。
そして、その間にそのアパートから得られた家賃収入は遺産ではなく、別の財産とみなされることになっています。
その結果、その後に行われた遺産の分割とは関係なく、それぞれが相続割合に応じてその財産を得ることができるようになっているのです。
したがって、2ヶ月分の家賃収入のうち半分は再婚相手の方の取り分ということになるのです。